Parisi「統計的場の理論」を読む

3-5 2nd order phase transition

  • 2次の相転移って、定義から自由エネルギー a math image の2階 微分が不連続になるわけですね。なんか本によっては一位の微分、first kind of the phase transitionって書いてあったような気もするのですが。
  • 昔の教科書だとエーレンフェストの分類が書いてあるかもしれない。ここは繰り込み群以降の現代的な統計力学、物性論では大きく変わったところだから、新しい本で見るのがいいかもしれませんね。
  • 1階微分なら1次の相転移。スピン系なら、(外場 a math imageについての)1階微分が マグネタイゼイション、2階の微分が相関関数、あるいは感受率(サスセプティビリティ)で、ええと前節で勉強したことからどうなるのかな。
  • 距離a math image離れたときに、相関関数がどう振舞うかという(3.54)式からスタートですね。
  • 相関距離a math imageだけ離れると相関がダンプしていくa math imageの項が基本的な振る舞いを決めるわけですが、a math imageもどこから出てくるのかチェックしておきたいなあ。
  • というわけでしばらく考えましたが、すぐには導けないので、それ以外のところを考えましょう。
  • (3.54)式は何を言っているかといえば、a math imageではξ は発散せずに有限な値を持つので、a math image以外のすべての温度で、相関関数はa math image でダンプする。でも、a math imageではξは発散してしまう。普通、相関距離が無限大になるので、本当に相関が無限大でも落ちないような気がしちゃうけど、そんなことはもちろんなくて、(3.54)の最後の式にあるように
    a math image
    で冪的に落ちる。もちろん、冪は指数関数よりははるかにゆっくる減衰するから、無限大でも「落ちない」と言ってもいいかもしれませんが。
  • 相関関数a math image が減衰するということは、あたりまえですが相関が無くなるということですよね。つまり、いまここにいるスピンが上を向いたり下を向いたり揺らいでいて、ξが1メートルくらいだったとして、京都にいるスピンはそれには無関係に上を向いたり下を向いたりしている。その時は相関関数a math image はゼロになるわけですね。平均値はゼロだとして。
  • そこに書いてあるように、皆が揺らいでいるけど、ここのスピンが揺らいで上向きになっているときに、周りのスピンも一緒に上向きに揺らいでいる、つまりコヒーレントに揺らいでいると、その揺らぎの塊くらいの長さは相関を持てる。つまり、相関距離ξはコヒーレントな揺らぎの幅くらいになっている。
  • でも、指数関数的な減衰と、a math imageでの冪関数的な振る舞いとはどこで 変わるのでしょう?あるいは、相転移温度に近づいていくと、指数関数が冪に似てくるのでしょうか。
  • うーん、教科書的な答えは、a math imagea math imageでは まったく違って、相転移温度直上ではまったく違う。でも、本当はそんなことはなくて、非常に近いところでは前駆現象的なものがあるはずですね。でも、多分それは平均場では出てこなくて、もっと近似を上げれば出てくるかも。厳密解のあるモデルを調べるのも面白いかなあ。
  • 次に「2次の相転移点上ではコヒーレント距離は無限大になると信じられている」とありますね。僕は誰かが証明していることだと思っていましたが、信じられていると書いてあるので、証明は無いみたいですね。
  • その根拠は、「自由エネルギーをkTだけ増加させるような揺らぎが存在するから」と書いてるんですが、これがなぜ根拠になるのか分かりません。kTは確かに統計力学では1単位自由度ですが、、、
  • ここは次の話と繋がっているんじゃないですかね。 次のところで、図3.4のような全体が正の磁化の中に負の磁化のスピンの集まりのバブルがあったとするという話がありますね。このバブルの中は同じ負のスピンなので、まさにこの半径Rくらいのサイズのコヒーレントな揺らぎになるわけです。 このときそこに書いてあるように、バブルの表面はスピンが正でも負でもなく非平衡な状態でa math imageに比例する自由エネルギーへの寄与があるだろう。 これがkTに比例するくらいの量なら、a math imageをほんの少し変化させるだけだから、そのくらいの揺らぎは許されるだろう。a math imageから a math imageくらいの大きさのコヒーレンスを持った揺らぎが許される。
  • なるほど、そういう議論か。
  • いま相転移温度の下から温度を上げていっていると考えていて、そこではa math imageは有限ですが、a math imagea math image なので、a math image 。はい、a math imageでコヒーレント長が無限になりました。そして、コヒーレント長は相関距離になるのはもっともらしいから、そこで相関距離は発散。おしまい。
  • おお!なるほど、霧が晴れました。
  • 平均場近似でやってきた計算をまとめると(3.55)のように臨界指数がでるわけですね。
  • このa math imagea math imageのミスプリかもしれませんね。
  • さて次に行きましょうか。
  • ちょっと待ってください。相関関数に関連してどうも分からなくなってることがあります。 よくa math imagea math imageが東広島、a math image が京都だとして、東広島のスピンが上や下に振動しているときに、京都のスピンがまったく独立に振動していれば相関関数はゼロ、東広島のスピンが上を向いてるときに、その影響を受けて京都のスピンが上を向く(下を向く)確率が高ければ相関関数は正(負)。その影響力が強ければ相関関数の絶対値が大きくなる。距離が離れれば普通値は小さくなるから、a math imageが広島のときに比べて、a math imageが京都の時は指数関数的に小さくなる。だけど、相転移のところでは指数関数的には落ちない、ということでしたよね。
  • はい。4月から京都に引越すんですよね。
  • ええ。でも質問はそれとは関係なくて、スピンが振動している、つまり動いている、それに影響されて別のスピンが、、、というときには、「時間」が入ってないとおかしいと思うんです。時間がなければ振動することもできない。でも、いま考えている式やその変形では、時間がどこにも無いんですけど、どうなってるんでしょうか。
  • うーん、答えられるかなあ。ええと、まあ統計力学はエルゴード性というものがあって、長時間の平均がアンサンブル平均に置き換えられるとしているので、ここで時間が定式化から消えるというのが答えかなあ。でも、エルゴード性は統計力学の中で一番微妙なところで、本当かと突っ込まれたら困る。 それと、確かに東広島のスピンが動き、もし相関関数が有限の値を持つなら、それに少し遅れて京都のスピンは動くわけですが、長時間平均を取ってるというときに、時間変化の中にこの動きが入ってないといけないわけだけど、平衡系の統計力学のときにそこまでちゃんと入っているのかどうかぼくには分からない。非平衡系の統計力学がちゃんとできたときに答えが分かるのかなあ。
  • 満足できない答えですねえ。
  • すいません。4月からの新天地で、もっと分かっていそうな人を探してみてください。
  • エルゴード性によって、長時間平均とアンサンブル平均が置き換えられるというのは授業で習いましたし、それはまあそうかなぁとも思うのですが、一方で、このスピンとあのスピンが相互作用しているときその及ぶ範囲はどの程度か、というように一つ一つの相互作用から考えていくと時間というものがあちこちに顔を出すような気がして。結局、全体と個々の境目が私の中でうまくつながっていないのだろうと思います。
  • ところで、4月になって京都に移住し大阪に通勤しています。京都は今桜が綺麗に咲いてます。職場の方はまだ研究ができる状態になってないのですが(- -;;)、Parisi先生の本は本棚にセットしたので落ち着いたらまた読んでいきたいと思っています。
  • 数年前、春に京都にいたときに、春 --> 桜 --> 円山公園 --> お花見 --> 日本酒 でしょうと回りの人を誘ったのですが、そんな通俗的なと皆に反対されました。ムッと思って日本酒を持って夜一人で円山公園の枝垂れ桜を見に行きました。皆に観光客でごった返しているぞと言われていたのとは違って、近所のおばさんたちが楽しそうにお花見をしていて、いい雰囲気でした。もしかしたら夢だったのかも、、、、 京都で青春を謳歌してください。

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Last-modified: 2007-04-10 (火) 17:54:13 (6233d)